ショコラとモンブラン初夏の午後、喫茶店の窓辺で君と向かい合っていた。
ショコラとモンブラン、どちらにしようかと迷う君の横顔を、僕はピアノの旋律でも聴くように眺めていた。 「半分ずつ食べない?」 君はそう言って笑った。フォークを交わすと、窓の外を風が吹き抜け、街路樹の緑が揺れた。 あの頃、僕らは何も知らなかった。けれど、甘い午後のひとときが、いつまでも心に残ることだけは、知っていた。 |
君とピアノと、初夏の記憶
胡蝶蘭と薔薇の花が、窓辺で静かに揺れていた。君は遠い星の話をしていたね。一億光年の彼方から届く光にも、誰かの夢が映っているのだろうか。僕らは花びらを一枚ずつ数えながら、まだ見ぬ星の名前を考えていた。君が微笑むと、夜空が少し近くなった。
胡蝶蘭と薔薇の花が、午後の光を分け合っていた。君は幸福とは何かと尋ね、僕は窓辺のコーヒーを指さした。湯気の向こうで、世界は静かに微笑んでいる。永遠なんて、きっとこんな一瞬のことなのだ。
海の見える道路沿いに、小さなケーキ屋さんを作ろう。
そう言ったら、君は笑って、花屋さんのほうがいいわ、と答えた。
「だって、ケーキは食べたらなくなっちゃうでしょう。でも、花はね、しばらく部屋に飾っておけるもの」
「ケーキだって、思い出には残るよ」
「じゃあ、両方にしましょう」
そんなわけで、僕たちは海辺の町の、古い木造家屋を借りることになった。
一階は君のお店。ケーキと花束、どちらも扱うことにしたらしい。窓際には小さなテーブルが二つあって、午後になると、海から吹いてくる風が、焼きたてのタルトの匂いを町の通りまで運んでいく。
二階には、僕のためのちょっとしたスペースがあった。
ベースとアンプ、それから古いレコードが何枚か。壁際に置いた小さなソファは、君がどこかから見つけてきたものだ。
「練習するのはいいけど、お客さんの迷惑にならないようにね」
「わかってる。なるべく静かにやるよ」
「ベースを静かにって、どうするの?」
君は笑いながら、一階へ降りていった。
僕は窓を開けて、海の向こうに見える白い船を眺めながら、ゆっくりと弦を弾いた。
低い音が、部屋の床を伝っていく。
初夏の午後だった。
しばらくして、階段を上がってくる足音がした。
「ねえ、ちょっと合わせてみない?」
君は花束を抱えていた。黄色い花と白い花、それに名前の知らない小さな青い花が混じっていた。
「お客さんは?」
「もう帰ったわ。今日はおしまい」
君はピアノの前に座った。
このピアノも、昔からあったものだ。鍵盤のいくつかは少し重くなっているけれど、音はちゃんと出る。
君が弾き始めたのは、あの頃、僕たちがよく演奏していた曲だった。
僕はベースを持ち上げる。
最初は遠慮がちに、次第に懐かしい調子を取り戻して、二人の音が部屋の中で重なっていく。
海の向こうで、船の汽笛が鳴った。
「ねえ、覚えてる?」
君が鍵盤から手を離さずに言った。
「昔、こんな芝居を上演したことがあったね。海辺の店で、ピアノを弾く女の人と、ベースを弾く男の人が出てくるの」
「ああ、あったね。最後に花束を渡すんだっけ」
「そう。ケーキも出てきたわ。あれ、誰が作ったの?」
「僕じゃないよ。君が作ったんだろう」
「そうだったかしら」
君は少し笑った。
それから、もう一度ピアノを弾き始めた。
僕たちは、あの芝居の続きを演じているのかもしれなかった。
それとも、昔の夢を、今になってようやく暮らしの中に置いてみただけなのか。
二階の窓からは、海が見えた。
一階の店先には、君が飾った花束が並んでいた。
夕方、最後のケーキを買いに来たお客さんが、階段の下から声をかけた。
「いい音ですね。何か演奏会でもあるんですか?」
君はピアノから顔を上げて、僕を見た。
「ええ、ちょっとしたセッションを。よかったら、ケーキを召し上がりながら聴いていってください」
僕はベースを抱え直した。
海から、初夏の風が吹いてきた。
そして、あの頃の夢が、ほんの少しだけ、今の僕たちのものになった。
財団に携わっているスタッフ、理事、スポンサーは大切な存在です。そしてなにより大切なのは若い生徒たちです。13年前、今は亡き父とわたしは教育を通して若い世代が彼らの夢を実現できるようにと願いました。この仕事は今後も継続し発展させていく所存です。南カリフォルニアのラーニング。センターから、ワシントンDCでのアール
財団に携わっているスタッフ、理事、スポンサーは大切な存在です。そしてなにより大切なのは若い生徒たちです。13年前、今は亡き父とわたしは教育を通して若い世代が彼らの夢を実現できるようにと願いました。この仕事は今後も継続し発展させていく所存です。南カリフォルニアのラーニング。センターから、ワシントンDCでのアール