不思議なスナック

マーマレードは太陽の味

初夏の夕暮れ、路地裏で見つけた小さなスナック。扉を開けると、ピアノの音がして、カウンターにはマーマレードの瓶が並んでいた。「これ、太陽の味がするのよ」と君が笑う。トーストにひと匙、琥珀色の甘さとほろ苦さが広がった。窓の外では、もう夜なのに、どこか遠い海辺の陽射しが揺れている。マスターは黙ってグラスを磨き、僕らはいつまでも、初夏の午後を食べていた。

エベレストを席巻する

「いつかエベレストを席巻するんだ」と、彼はカウンターの上にピーナッツを並べて山を作った。隣の君は、ピアノの鍵盤を弾くように、その山の頂にマーマレードをひと匙置いた。「じゃあ、私は太陽を連れて行くわ」。スナックのマスターが笑いながら、古い登山帽を二人に差し出した。窓の外は初夏の雨。僕らはグラスを掲げ、まだ見ぬ雪山に乾杯した。帰り道、君の靴音が、どこまでも高い空へ続いていた。

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